西湖の神様たち~初詣~  (どんど焼きの追記あり)

皆さん、お正月はいかが過ごされたでしょうか?

普段は会わないご親戚やご家族と会われたり、神社巡りをされたり、あるいはお宅でゆっくりされたり・・・職種によってはお仕事をされた方もいらしたかと思います。

 

今回の記事ではそんなお正月を振り返り、西湖の初詣のことをご紹介させていただきます。

 

まずは『初詣』の歴史を紐解けばーー

家の家長さんが大晦日の夜から元旦の朝にかけて氏神様の社に籠り、祈願する『年籠り(としごもり)』が『初詣』の始まりとか。

江戸時代の末期までは、氏神様またはその年の恵方の方角の寺社に詣でるのが多かったのが、明治以降、一般的には有名な寺社へ詣でることへと変わっていっているようです。

 

そんな中ーー

西湖の村人は変わらず元旦に西湖の神様たちを詣でます。

 

昔は大晦日の深夜、提灯やランプを下げ、氏神様・天王様・疱瘡神様・お地蔵様・山の神様・道祖神様・各一家衆がまつる神仏を巡ったものですが、初詣の日は時代が経つとともに元旦の陽が登ってからへと変わってきました。

 

それでも今、平日はほとんど人と出会わない神社に西湖の人々が集い、

「今年もよろしくお願いします!」

「よろしく~!]

あちこちで挨拶の声が飛び交い賑わいを見せる元旦の午前中はーー

まるでこの土地の深いところからエネルギーが湧いて

“昔『にしのうみ』と呼ばれていた時代” と ”今の『西湖』” が重なったかのように、

あたりは活気に溢れます。

 

 では早速。

この土地を大事にし、また1年がんばっていこうと心を新たにする風習~西湖の初詣~を、ご紹介しましょう。

最初に行くのもちろん西湖の氏神様・薬明神社。

『西湖』という集落を守る神社で、西湖北岸の集落にあります。

祀られているのは出雲の神様で、日本の国作りをした“大国主の命” と “少名彦の命” 。

 

ここには県の文化財に指定されている『西海(にしのうみ)文書』というものが残されてもいます。それは武田信玄とその父・信虎が、武田家家臣団だった西乃海衆に宛てた貴重な手紙です。

 

またこの神社がユニークなのは、お賽銭箱がないことです。

それは昔、お賽銭箱を置くたび台風などで壊れたという経緯があり、それを不思議に思った神主さんが神様にお聴きしたところーー

「ここは子供のための神社じゃ。だからお賽銭はみんな、子供にくれてやれぃっ」

とおっしゃったとか。

う~ん。太っ腹な神様ですね~!(笑)

以来、お賽銭箱を置くことはやめ、村の子供はここでは自由にお金を拾っていいことになったそうです。

何ておおらか! 他の神社でそんなエピソード、聞いたことがないですよね?

村に公園もなかった昔にはこの神社が遊び場だったことを、今40代の方からお聞きしました。おおらかな神様に見守られて、鬼ごっこやかくれんぼ、石蹴りなど・・・楽しんだのでしょうね。

次の世代・子供を大事にする氏神様は、村の中心でもありました。

 

 

そんな神社の横には

疱瘡の神様と水の神様がいらっしゃいます。

西湖にとってこの神様たちも、村を守る大事な神様です。

 

 

                      次は山の神様。

山と湖に囲まれた西湖では、むかし山は豊かな恵みを与えてくれる大事な場所でした。

 

そこでは薪とり、山菜とり、炭焼きもし、また獣の肉をいただいたりもしました。

スーパーで食べ物すべてを調達する現代とは違います。

 

自然は人にとって恵みを与えてくれると同時に脅威でもあります。

山の神様とは、そんな人が生きていくのを見守ってくださる大事な役割をして下さいました。

 

 

 

山の神様のところに行くには、こんな山道を登っていきます。

実はここは昔の通学路でもありました。

 

 

子供が学校へ行くのに

教科書やお弁当など荷物を風呂敷に包んで背負い、

山の道を毎日毎日通ったのです。
この「通学路」の途中に

山の神様の祠があります。

 

 

                       

                そして次にご紹介するのが、道祖神様。

 

道祖神とは、悪霊が入ってこないように、村境いにまつられる神様です。

1月14日の小正月のどんど焼きが、この神様のお祭りです。

 

山梨の道祖神は

大きい丸い石だけが飾られていたり、

男女ペアーの彫刻がされているのを

よく見かけます。

 

人が幸せに生きていくためのシンボルが

「丸=縁」だったり

「男女=陰陽のバランス」だったりするのは、

とても深いものがありますよね。

 

 

西湖の道祖神には、上のふたつの写真の神様がまつられています。

 

 

そして最後にご紹介するのが、『せのうみ神社』。

通称を『竜宮』とも呼ばれています。

西湖の南岸・青木が原樹海の中、森の中にある神社です。

青木が原樹海には、1200年前、富士山の噴火によって流れて出来た溶岩の洞窟が100以上あります。

そんなひんやりした洞窟の中にある、とても神秘的な神社。

 

祀られているのは、富士山の御祭神コノハナサクヤ姫と、海の神様・わだつみの娘・トヨタマ姫。

 

江戸時代は富士講の修行者が、富士山に登る前にお参りに来る聖なる場所でもありました。

 

また近年まで『雨乞い』の竜の神様がいらっしゃる所としても有名で、近隣の人々が霊験あらたかと通って来たところでもあります。雨乞いの儀式では、こんな歌を祈りをこめて歌いました。

             ~~十二が岳の黒雲。段之の方へぶっかーれ

                天に雨はにぃーどうか

                竜宮洞は留守どうか

                桑留尾まーりをどうするどう

                あわもひえもかーらから

                なべぇくもが巣かける

                雨を降らせ給ふやい~~

 

村の中にある『薬明神社』が “西湖の村人を守る神様” であるとしたら、

ここ『せのうみ神社』は “西湖の自然を守る神様” といったところのようです。

 

 

さてさて。

早足で紹介したので、興味のある方は是非ゆっくり見にいらしてくださいね。

もっとご紹介したいことはたくさんあるのですが・・・

今日のところはこれで、西湖の初詣巡りはお終いです。

 

私はここが好きで家族で引っ越してきて18年目となりますがーー

『自然』も『西湖の人の生き様』も含めて・・・西湖の魅力はつきません。

 

長い記事を読んでくださり、ありがとうございました。

 

 

 

     2014年 どんど焼き
     2014年 どんど焼き

~~追記~~

 

 

この記事をアップした後ーー

1月14日の小正月のどんど焼き(道祖神のお祭り)がありましたので、

写真を追加します。

 

 

 

 

どんど焼きは昨年の厄を火を炊いて焼き払い、

新しい年の豊作と一家の繁栄を祈る1年の始まりのお祭り。

西湖では村中の人が準備し、大掛かりに火を燃やします。

 

御神木は3本。

夜8時に火を点火し、

真ん中に立てた御神木が炎に焼かれて倒れるまで

お祭りは続きます。

 

昔は炎の中、青年が御神木に登るという・・・

物凄いパフォーマンスをしたものでしたが、

今は時代でその風習はなくなったもののーー

すごい熱気の中でこのお祭りが行われることには

変わりありません。

 

 

 

西湖ではーー

新しい年が始まる大掛かりな儀式の日とも言えます。

本当に今年が・・・皆様にとって、いい年となりますように!